イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

第8回北海道イトウ保護フォーラム in 朱鞠内第8回北海道イトウ保護フォーラム in 朱鞠内湖
「イトウ保護、釣り人ともに」

講演1

釣り人にできること

千葉貴彦

フライフィッシングガイド 

 北海道のイトウ釣りは、世界のサケ・マス類の釣りの中で、トップクラスの魅力を持っていると思います。

 まず第一は、魚体の大きさです。1mを超える巨魚が釣れるところは、そう多くはありません。

 例えば、私が毎冬、長期滞在してきたニュージーランド。日本のアングラーの憧れの的です。しかし、ここの最大サイズは、80cmクラスです。

 二つ目は、アプローチが短いことです。車を降りて、歩いて数分で竿が振れます。

 私が北海道をガイドしている在日アメリカ人は、モンゴルまでイトウ釣りに行っています。70万円もかけて、砂漠と草原を越え、釣り場にやっとたどり着くそうです。

 彼は北海道のイトウ釣りを経験して、「こんなに身近な場所で釣れるなんて、素晴らしい」と感激していました。

 ニュージーランドも同じです。牧草地の中で、牛や羊をバックに竿を出している写真を見て、「そんなに遠いはずはない」と思う方もいるでしょう。

 ところが、車と徒歩で半日、1日かかるところがほとんどです。

 世界で、こんなにも身近なところに大きなイトウがいて手軽に釣れる場所はありません。それが、私たちの北海道なんです。

 ところが、こんなに魅力あふれる北海道のイトウ釣りをめぐる情勢は、きわめて厳しいものがあります。希少種保護条例の対象になると、釣りが一切禁止になる恐れがあります。

 もちろん、イトウの数を減らした最大の原因は、河川改修などの開発であることは明らかです。
 
 しかし、イトウ釣りをしない人は、そうは考えない。「そんなに減っているのなら、釣り禁止にすればいい」という声は根強くあると思います。川村さんのレポートにもありますが、配慮の行きとどいた釣りをして、私たち釣り人もイトウの保護に努めていく必要があります。

 私は、イトウ釣りを末永く続けるために、「ノーキル(殺さない、死なせない)」を呼びかけたい。私は、そのために、以下の3点を励行しています。

(1)針はシングルフック、バーブレス

 イトウ釣りを本格的に始めた十数年前から実行しています。
 また、ポイント(口に刺さる部分)が短い針を使うようにしています。

(2)やさしい写真撮影

 河原や岸に引っ張り上げないことです。カナダのガイドは、撮影時に「1、2、3」と数えて魚の呼吸を整え、水中からさっと揚げさせて、1枚撮っておしまい。この間、数秒です。

(3)やさしい取り込み、リリース。外しにくい場合はラインを切る

 取り込みは、ランディングネットで。できるだけ水中から出さないようにする。

 このほかにも、釣り人にできることはたくさんあると思います。不必要なダム建設、砂防工事などにも目を光らせ、できれば声をあげていただきたい。

 また、地元にお金を落とすことも大事だと思います。食べ物は都市のスーパーで買わず、現地のコンビニで買うとか、車中泊ではなく宿を利用するとか。

 お金のある人は、地元にどんどんお金を落としましょう。

 保護の主役は、地元の人たちです。その人たちに「イトウは街を潤す大切な魚だ」と思ってもらわなければなりませんから。


ちば・たかひこ
 1965年名寄生まれ。フライフィッシングに目覚めてから、道内や本州を「釣り放浪」。ニュージーランドに毎年、長期滞在。カナダにも釣行。


参考サイト

フライフィッシングガイドサービス Wildlife