第9回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム視察報告
視 察 日:2010年8月12日
天 候:霧
参 加 者:12名
目 的:矢臼別演習場内の別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダムの現況確認を行った。特に植生とダム堤下流の現況に注目した。
ダム堤から上流を見る。河道は安定している。 | さらに上流。左岸側。植生は安定し、去年よりも大きく成長している。 | 上流、ダム堤直下。前日の雨で増水している。 |
ダム堤から下流を見る。広く冠水している。 | 左岸。魚道跡の水没コンクリート基礎は、土砂に埋もれ、さらに、大雨のため冠水している。 | 左岸下流。植生が回復し、足場が安定してきた。 |
下流からダムを見る。 | 下流では、アメマス・ヤマベ・オショロコマ(釣り具使用)。上流域でも同様。 | スリット直下付近。 |
トライベツスリットダム調査表
▼調査年月日:2010年8月12日
▼天気:霧
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図.トライベツ川砂防ダムの上、下流の植生.(2010.8.12) |
上流域(A~C地区) 下流域(D~I地区) |
▼トライベツ川砂防ダムの上、下流域の植生遷移
トライベツ川砂防ダムに開けられたスリットの効果をモニタリングするために「道東のイトウを守る会」ではトライベツ川砂防ダムのスリット化後に継続して調査を行ってきた。第1回は2007年で、その後毎年2回以上調査を行ってきている。2010年度も5月に引き続き8月12日(木)に2回目の現地調査を行った。2008年に引き続き3回目の植生の調査も行ったので、これまでの調査との比較で植生の調査結果について報告する。調査は午前10:00頃から11:00頃までトライベツ川のスリット化後のダムの上、下流で行った。
ダム上流では、2009年までの調査では、河道の両側に植物群落が形成されていたが、今回はそれが更に進んでさらに安定した群落になっていた。上流部のダムから最も遠い自然河道から横堤の入り口にあたるところではヤチハンノキとケヤマハンノキの群落が形成されていた。樹高は両種とも4~5mあった。昨年の調査でも既に4m位あったので、この一年で樹高はそれほど高くなっていないが面積が大きく増大していた。またその南側にも群落が形成されつつあった。上流からダムに向かって左側(左岸)のダム近くのB地区ではこれまではぬかるみの深い湿地となっていたが、ここは昨年と比べて一段と安定して乾燥状態にあった。植生としてはダムに向かってオオカサスゲ、エゾアブラガガヤが優占しており、昨年よりも安定した植生となっていた。B地区ではその他、イ、ヒロハドジョウツナギ、ヒメウキガヤ、ミゾソバなどが見られた。ダム上流部のC地区ではオオカサスゲやヒロハドジョウツナギ、エゾアブラガヤの他にハンゴンソウ、クサヨシ、オオヨモギなどがみられ昨年の調査と基本的には同じような植生であるが、昨年よりも更に一層安定した植生になっていた。
ダムの下流では以前は殆ど植物群落が形成されていなかったが、2008年5月から土砂の堆積したところに新たに植物群落が形成され始めた。2008年8月の調査ではダムの近くと左岸付近にダムの付近にヒメコウガイゼキショウやミゾソバが群落をつくり、ミズハコベも小群落をつくっていた。2009年の調査でもほぼ同じところに植物群落が形成されていたが、さらにヒロハドジョウツナギやクサヨシ、ヒメウキガヤ、オオカサスゲが生育し始めており、植生の遷移がみられた。今回の調査ではこれらの地域ではオオカサスゲ、ミゾソバ、ヒロハドジョウツナゲ、クサヨシ、ヒメウキガヤが優占して繁茂しており昨年よりもより安定した群落となっていた。
これらの植生はダム上流域でみられた植物種と殆ど同じ構成種からなり、ダム下流域でも今後流路がが安定していけばダム上流域と同じような植生に遷移していくものと予想される。
▼まとめ
今回は前日の雨のため、下流域が広く冠水していた。上流は、樹木も大きく成長し、流路も安定していた。下流域については、降雨のたびに池状態であることから、人為的に川筋を作るべきである。まず、旧魚道口閉鎖部分のコンクリート基礎の上部1mを撤去し、左岸に沿って流路を形成。コンクリート撤去後、右岸側に布団籠等の設置によって流れの分散を止める。さらに、左岸本流の水深を充分に確保するため、一部土砂を掘り、その土砂を右岸によせる。以上の改善策を提言する。当地域は、自然度が極めて高いことから、改善策によって、上流域同様、植生の早期回復が図られるものと考える。
次回視察は、2011年5月を予定している。
道東のイトウを守る会(植生:神田房行、写真:飯田弘己、作図:元内孝義、文責:田中明子)