2005年3月16日
防衛施設庁長官殿
防衛施設庁札幌防衛施設局局長殿
矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会各位
矢臼別演習場内などの砂防ダム事業に関する要望
イトウ保護連絡協議会
構成団体
別寒辺牛川流域イトウ保護連絡協議会(代表 石沢元勝)
別寒辺牛川のイトウを守る会(代表 山代昭三)
尻別川の未来を考える オビラメの会(会長 草島清作)
斜里川を考える会(会長 岡崎義昭)
ソラプチ・イトウの会(会長 伊藤行浩)
猿払村商工会青年部(部長 梁田徳雄)
朱鞠内湖淡水漁業協同組合(代表理事組合長 菅原博)
釧路自然保護協会(会長 高山末吉)
遊楽部川の自然を守る会(代表 稗田一俊)
イトウ保護連絡協議会のサイト
http://homepage3.nifty.com/huchen/itou-net/index.html
要望書窓口 平田剛士(オビラメの会)
私たち「イトウ保護連絡協議会」は、北海道内の各地域でイトウの保護活動を行なっている団体の連合体です。貴札幌防衛施設局による別寒辺牛川水系砂防ダム事業について、これまで2度(2003年5月と2004年3月)にわたり質問書・要望書をお届けました。昨年5月には貴局から「イトウの保護をはじめとする環境保護の観点から適切に対処したい」とのご回答をいただき、貴局のイトウ保護に対するご理解と真摯なご対応に改めて敬意を表します。また「矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出等検討委員会」の委員・アドバイザー各位におかれましては、中間報告でトライベツ川砂防ダム「改修」の方針を打ち出され、そのご英断に敬意を表します。現在はその具体的方法について議論が進んでいると拝察しますが、この間の動きを踏まえ、いまいちど私たちの要望をお伝えします。失礼ながら、今年3月末日までに文書で上記窓口宛てにご回答をお届け下さい。なお、本文書と貴職からの回答書は当協議会ウェブサイトに公開します。別寒辺牛川をはじめ、絶滅危機種イトウの生息環境の保全のために、どうぞいっそうご尽力くださるようお願い申し上げます。
1 トライベツ川砂防ダムを一刻も早く完全撤去して下さい。
トライベツ川砂防ダムについて、第6回矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会(昨年12月10日開催)では、調査データを元に、川村洋司委員が「トライベツ川の演習場内から発生する流砂量は、厚岸湖に到達する流砂量に占める割合としては僅かにしかならないのではないか。また、浮遊砂やウオッシュロードが圧倒的に多いことから、ダムで止まる量は全体で考えると僅かなものと考えられる」と述べるなど、私たちが一貫して主張してきたように、このダムが肝心の「砂防」効果にきわめて乏しいことが改めて明らかになりました。また新谷融委員長は「ダムによる落差・分断を改修してから、ダム以外の生産源対策を進め、そしたらいずれダムはいらなくなるだろうと、そこまで長期的に(防衛施設局は)やると覚悟を決めたようです」と述べ、貴局も同意されました。私たちは、貴局がこのダムの撤去を決断されたと拝察しています。そのうえで私たちは貴職に対し、このダムがこれ以上イトウたちの繁殖を阻害してしまう前に、一刻も早く、二次的な破壊を起こさない適切な方法によって、このダムを完全に撤去し、環境を着工前の状態に復元することを求めます。
2 未着工ダムの建設中止を決定して下さい。
第5回委員会(昨年7月6日開催)で提示された「中間報告」は、「フッポウシ川、西フッポウシ川流域の土砂流出対策としては、水辺環境を保全し、演習場としての機能を損なわない土砂流出対策として、生産源対策を含めた新たな対策工法の検討が必要」と述べています。水辺環境の保全を前提に発生源対策の実施を急ぎ、フッポウシ川砂防ダム・西フッポウシ川砂防ダム等の新たなダム建設計画の中止を決定して下さい。
3 矢臼別演習場内の風連川水系の砂防ダムを撤去し、イトウ生息環境を復元して下さい。
昨年5月にいただいた回答書で、貴局は「風連川支流及び知来別川支流については、環境調査の結果、イトウの生息は確認されておりません」と述べておられます。しかし同年7月、矢臼別演習場近傍の風蓮川支流で、専門研究者によりイトウ稚魚(当歳)の生息が確認され、当協議会主催のイトウ保護フォーラム(11月21日、厚岸町で開催)でも報告発表が行なわれました。専門家によれば、風蓮川水系のイトウ個体群は今や絶滅寸前と推測されていますが、各支流に設けられたダムによって繁殖環境が失われたことも原因の一つと考えられています。わずかに残った繁殖環境の保全と、健全なイトウ個体群の復元に向けて、別寒辺牛川と同じように水辺環境保全を前提にした土砂流出対策を講じられたうえ、砂防ダム群を撤去してください。また、鬼志別演習場内知来別川水系の砂防ダムについても重ねて同様に要望します。検討委員会各位におかれては、自衛隊演習場内で講じられる「土砂流出対策」が必ずしも的を射ていないばかりか、周囲の貴重な自然環境に重大な損害を与えている場合があるという「別寒辺牛湿原の教訓」を、道民の中で最も強く実感されていることと存じます。どうか広い視野でご判断とご提言されることを切望します。
4 委員会の議事録と配付資料を公開して下さい。
前回の要望書(昨年3月)でも述べたように、貴局ウェブサイトにて公開されている「議事要旨」は、委員・アドバイザー各位の質問・要望・意見がごく簡略化されて記されているだけで、貴局(委員会事務局)の回答や説明の部分が完全に欠落しています。また、傍聴者には配付される資料類がウェブに公開されていないため、とりわけ札幌で開催される委員会について、厚岸町などの地元住民に十分な情報が伝わっていません。せっかく委員会の公開に踏み切られたのに残念です。個人のプライバシーとイトウ保護に支障のある部分を除いて、議事録と資料の積極的な公開を望みます。
以上