2005年10月27日
矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会
委員長 新谷融様
委員・アドバイザー各位
要望書
イトウ保護連絡協議会
構成団体
別寒辺牛川流域イトウ保護連絡協議会(代表 石沢元勝)
道東のイトウを守る会(代表 山代昭三)
尻別川の未来を考える オビラメの会(会長 草島清作)
斜里川を考える会(会長 岡崎義昭)
ソラプチ・イトウの会(会長 伊藤行浩)
猿払イトウの会(会長 小山内浩一)
朱鞠内湖淡水漁業協同組合(代表理事組合長 菅原博)
釧路自然保護協会(会長 高山末吉)
遊楽部川の自然を守る会(会長 稗田一俊)
イトウ保護連絡協議会のサイト
http://homepage3.nifty.com/huchen/itou-net/index.html
要望書窓口 平田剛士(オビラメの会)
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。いつも当協議会の要望などに真摯に耳を傾けていただき、改めて感謝申し上げます。
さて、貴矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会はさる9月27日、「矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等に関する最終調査報告書(案)」について意見交換され、トライベツ川砂防ダムの改修、新たな2ダムの計画撤回、土砂発生源対策の徹底、モニタリング継続などの提言を同報告書に盛り込まれました。「道民にとってイトウ生息地は神格化されたエリアである」(新谷融委員長)というコンセプトに従う貴委員会のご尽力に敬意を表します。
しかし残念ながら、同報告書(案)および貴委員会のご議論には、イトウ生息地保護の観点から、いくつか大きな疑問が残りました。以下に列記のうえ、諸点について当協議会からの要望をお伝えしますので、ご多忙とは存じますが、11月末までにご回答いただき、また最終報告書に反映いただきますよう、お願い申し上げます。なお、本要望書ならびに貴委員会よりのご回答は、当協議会ウェブサイトに掲載させていただきます。
絶滅に瀕しているイトウの保全・保護のために、どうぞ今後ともお力をお貸しいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
敬具
(1)トライベツ川砂防ダムの必要性に疑問
「緊急安全弁」の表現は、同委員会を経て初めて登場し、ダム建設当時には全く見当たりません。逆に「この位置にこのダムは不適当」と委員長はじめ各委員が繰り返されています。そもそもなぜこんな環境破壊的なダムが造られてしまったのか、肝心の部分が未解明のまま放置されています。同様の事態を二度と引き起こしてはならないという意志を、改正河川法の主旨も生かしながら、ぜひ最終報告書で表明してください。
(2)ダム撤去の否定理由に疑問
ダム撤去案を「全面撤去はかえって自然を破壊する」という理由で片づけておられますが、この論法は、担当官庁の居直りを許し、自ら破壊した自然環境の復元に対する非常に無責任な態度を追認してしまいます。技術的検討をいっそう深めて環境を破壊しないダム撤去工法を開発し、トライベツ川を一刻も早く「ダム以前」の状態に復元するよう、求めてください。
(3)スリット化採用理由に疑問
同様に、スリット化採用に際して詳しい技術的検討は行なわれたでしょうか? スリット化改修の実例は少なく、いずれも未だ実験的であり、何人かの委員も指摘されたように、事業自体の順応管理が不可欠です。このことを報告書に明示し、具体的な工事計画を事前に公開して第三者機関の検証・評価を受け入れ、また評価に応じて計画を漸次改良し続ける仕組みを保証してください。
(4)モニタリングに疑問
モニタリングは、その結果を事業計画に随時反映させる仕組みがあってこそ有効です。その必要を説く委員はおられましたが、貴委員会として具体的な仕組み作りや、第三者機関による検証方法まで、担当官庁に指導すべきです。
(5)他河川における同様のダムへの対応
何人もの委員が風蓮川水系ダム群についてもイトウ生息地復元を求められ、貴委員会として報告書に盛り込まれる方向に進んだのは画期的です。当協議会はこのほか、鬼志別演習場(猿払村)内でも、防衛施設庁による砂防ダムがイトウ個体群を脅かしていると指摘しています。一刻も早い対応を望みます。
以上