イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダムおよび楓沢流域第2号砂防ダムの上・下流域の植生──2015年夏の調査──

神田房行

 

トライベツ川砂防ダム

トライベツ川砂防ダムトライベツ川砂防ダムに開けられたスリットの効果をモニタリングするために「道東のイトウを守る会」ではトライベツ川砂防ダムのスリット化後2007年から継続して調査を行ってきた。2015年度も8月14日(金)に現地調査を行った。植生調査では2008年8月から通算8回目のモニタリング調査を行った。

ダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成されてきた。上流部の横堤の始まる所の左岸にはヤチハンノキとケヤマハンノキの群落が形成されている。今年は更にダム近くにもヤチハンノキが進出してきており、目で確認できる個体が10本ほどあった。今後樹林化がさらに進むものと思われる。

ダムの下流では2008年頃から土砂の堆積したところに新たに植物群落が形成され始め、ここ数年更に安定した植生となっており、オオカサスゲ、ヒロハドジョウツナギ、クサヨシなどが優占していた。今年も植生はほとんど変わらないが、草丈が高く、より安定した植生となっていた。

昨年下流域の横工が撤去され、中央部を直線的に河川水が流れることが可能な状態となり、今年5月の視察でも中央部にしっかりとした流路ができたことが確認された。今回はさらにこの流路がしっかりと安定してきており、河床は砂礫で覆われていた(写真)。

下流域にはまだ大きな水たまりがあり、表面には浮草様にミズハコベが生育していたが、将来的にはこの水たまりも徐々に植物群落が侵入し湿地に変わるものと思われる。全体としてダムの上下流ともイトウの遡上環境が良好なものになったものと思われる。


風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム

風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2015年8月14日にスリット化後の5シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行った。

下流域ではこの日は大雨の影響で水位が高く、およそ1.5mであった。オオカサスゲ、ミゾソバ、イヌスギナなどが優占していた。前年に増大していた池状の水たまりは左岸側で決壊して大きな流路となっており、昨年よりイトウが遡上しやすい環境となっていた。

上流域は一面のオオアワダチソウ群落となっており(写真)、昨年クサヨシ、ハンゴンソウなどが優先していたのと違い、植生が大きく変化していた。流路はしっかりとしており、左右岸が植生で覆われて、しっかりとしており、安定していた。


風蓮川支流楓沢流域第2号砂防ダム

風蓮川の支流である楓沢流域の第2号砂防ダムのスリットも2011年玉川と同じ時期に開けられた。

上流域には昨年と同様に安定した、オオカサスゲ、クサヨシ、オオアワダチソウ等からなる植物群落が形成されていた。ただ、アメリカオニアザミ、セイヨウトゲアザミなどの外来植物がかなり多くなってきていた。下流域ではオオカサスゲ、クサヨシなどが生い茂っており、昨年と同じような植生で、変化は見られなかった。楓沢流域の第2号砂防ダムの上下流域とも現状ではイトウの遡上に問題ないものと思われる。


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