第26回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム
第17回風蓮川水系玉川流域第1号ダム・楓沢流域第2号ダム視察報告
視察日:2018年8月17日(金)
天 候:雨模様
参加者:7名(内報道1名)
目 的:矢臼別演習場内のトライベツ川、玉川・楓沢各スリットダムについて現況確認。トライベツ川はダムの下流域の本流の形成状況、玉川・楓沢は下流の砂州及び川の流れの推移に注目した。今回は、夏場の植生調査を行なった。
▼トライベツ川スリットダム
ダム堤から上流域を見る | 下流を見る |
下流から見た本流形成 | 上流側からみた本流 |
トライベツ川スリットダム堤直下の状況の変化(2012~2018)
2012年8月 | 2013年8月 |
2014年8月 | 2015年8月 |
2016年8月 | 2017年8月 |
2018年8月 | |
▼玉川流域第1号スリットダム
ダム堤から下流を見る | 下流からダム堤を見る |
ダム堤から上流を見る | ダムを挟んで左が上流右が下流 |
▼楓沢流域第2号スリットダム
下流からスリットダムを見る | ダム堤から下流を見る |
ダム堤から上流を見る |
▼トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダムおよび楓沢流域第2号砂防ダムの上・下流域の植生──2018年夏の調査──
道東のイトウを守る会 代表 神田房行
トライベツ川砂防ダム
トライベツ川砂防ダムに開けられたスリットの効果をモニタリングするためにトライベツ川砂防ダムのスリット化後2007年から継続して調査を行ってきた。2018年度も8月17日(金)に現地調査を行った。植生調査では2008年8月から通算11回目のモニタリング調査となる。今年は雨が多かったせいでこれまでに比べ河川の水位が非常に高かった。(写真)
植生ではダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成され、左岸のヤチハンノキとケヤマハンノキは森林化していた。その他、オオカサスゲ、クサヨシ、ヨシ、ハンゴンソウなどが見られた。
ダムの下流では2008年頃から土砂の堆積したところに新たに植物群落が形成され始め、ここ数年更に安定した植生となっており、オオカサスゲ、ヒロハドジョウツナギ、クサヨシ、イ、ミゾソバ、オオアワガエリなどが優占していた。植生は昨年とほとんど変わらないが、安定した植生となっていた。
2014年に下流域の横工が撤去され、中央部を直線的に河川水が流れるようになってきていたが、この流路が右岸側一本に変わってきている。しかし、全体としてダムの上下流ともイトウの遡上環境が良好になってきた。
風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム
風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2018年8月17日にスリット化後の8シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行った。玉川も今回は水位が非常に高く、いつもより40-50cm高かった。
下流域ではクサヨシ、オオカサスゲ、オオアワダチソウなどが優占していた。2014年に増大していた池状の水たまりは大きなままであるが、水たまりからの流れは左岸側で1本の流路となっておりイトウがより遡上しやすい環境となっていた。上流域は昨年同様に一面のオオアワダチソウ群落となっていた。ダムの近くまで植生に覆われており、流路はしっかりとして、安定していた。
風蓮川支流楓沢流域第2号砂防ダム
風蓮川の支流である楓沢流域の第2号砂防ダムのスリットも2011年玉川と同じ時期に開けられた。ここも今年は水位が高く、上流では水深が80cm位もあった。ダムの上流はオオカサスゲ、クサヨシ、オオアワダチソウなどが見られ、枯死木が多かった(写真)。下流域ではオオアワダチソウ、クサヨシ、カモガヤ、オオカサスゲなどが生い茂っており、ダムの近くまで植生で覆われていた。砂防ダムの上下流域とも現状ではイトウの遡上に問題ないものと思われる。
▼まとめ
トライベツスリットダムの上流は良好な状態を保っている。下流は、2014年に横工が撤去され、河川の真ん中に本流が形成されていたが、2017年の春の視察において右岸に本流が形成されていたと報告したが、今回の視察においても右岸に本流が形成されており、このまま推移するものと思われる。今回の調査では雨等により水量が増えてはいたが、右岸側のため池状態も将来的には植物の侵入により解消されると思われる。
玉川流域第1号スリットダムは、下流にできた湾曲方の堆積土砂は現状を維持しつつ小さくなっている。右岸側に水草が繁茂し、水の流れは完全に無くなっている。左岸に形成されていた本流の流れは変わらずこのままいくと思われる。上流は安定。
楓沢流域第2号スリットダムは、上下流共に安定している。
又、今年はどの川も前日までの雨により水量が多く、川の中の定点観測が十分にできなかった。
3河川ともに、イトウの生息環境として良くなってきている。
植生報告:神田房行
作図:元内孝義
文責・写真:田中 正