イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

第28回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム

第19回風蓮川水系玉川流域第1号ダム・楓沢流域第2号ダム視察報告

視察日:2019年8月22日(木)
天 候:雨模様
参加者:8名

目 的:矢臼別演習場内のトライベツ川、玉川・楓沢各スリットダムについて現況確認。トライベツ川はダムの下流域の本流の形成状況、玉川・楓沢は下流の砂州及び川の流れの推移に注目した。今回は、夏場の植生調査を行なった。


▼トライベツ川スリットダム

トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
ダム堤から上流域を見る 下流から見たダム堤
トライベツ川スリットダム
ダム直下遊水地草地化進む 2012年8月
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
2013年8月 2014年8月
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
2015年8月 2016年8月
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
2017年8月 2018年8月
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
2019年8月 採捕したヤマベ等

トライベツ川スリットダム平面図(2019年8月22日)

トライベツ川スリットダム


▼玉川流域第1号スリットダム

玉川流域第1号スリットダム 玉川流域第1号スリットダム
ダム堤から下流を見る 下流からダム堤を見る
玉川流域第1号スリットダム  
ダム堤から下流を見る  
玉川流域第1号スリットダム 玉川流域第1号スリットダム
鉄砲水により洗堀された遊水地状の水たまりもかなり縮小  

玉川流域第1号スリットダム平面図(2019年8月22日)

玉川流域第1号スリットダム


▼楓沢流域第2号スリットダム

楓沢流域第2号スリットダム 楓沢流域第2号スリットダム
下流からスリットダムを見る ダム堤から下流を見る
楓沢流域第2号スリットダム  
ダム堤から上流を見る

 

楓沢流域第2号スリットダム  
楓沢は洗堀の痕跡がなくなっている  

楓沢流域第2号スリットダム平面図(2019年5月17日)

楓沢流域第2号スリットダム


トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダムおよび楓沢流域第2号砂防ダムの上・下流域の植生 ―2019年夏の調査―

道東のイトウを守る会 代表 神田 房行

トライベツ川砂防ダム

トライベツ川砂防ダムに2007年に開けられたスリットの効果をモニタリングするために2019年度も8月22日(木)に現地調査を行なった。植生調査では2008年8月から通算12回目のモニタリング調査となる。

植生ではダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成され、左岸のヤチハンノキとケヤマハンノキは森林化していた。その他、ヨシ、クサヨシ、ハンゴンソウ、ヒロハドジョウツナギ、オオカサスゲ、ホザキシモツケ、イワノガリヤス、オオアワダチソウなどが見られた。

ダムの下流では2008年頃から土砂の堆積したところに新たに植物群落が形成され始め、ここ数年更に安定した植生となっており、ヨシ、クサヨシ、オオカサスゲ、ヒロハドジョウツナギ、クサヨシ、ヒメウキガヤ、オオアワダチソウなどが優占していた。植生は昨年とほとんど変わらないが、安定した植生となっていた。

2014年に下流域の横工が撤去され、中央部を直線的に河川水が流れるようになってきていたが、この流路が幅約2mで、右岸側一本になってきた。ダム下流の広い範囲が水たまりであったが、徐々に陸化しつつある(写真)。全体としてダムの上下流ともイトウの遡上環境が良好になってきた。

トライベツ川スリットダム

風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム

風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2019年8月22日にスリット化後の9シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行なった。

下流域ではクサヨシ、オオカサスゲ、オオアワダチソウなどが優占していた。2014年に増大していた池状の水たまりは大分小さくなり、浅くなってきた。水たまりからの流れは左岸側で一本の流路となっておりイトウがより遡上しやすい環境となっている。上流域はオオアワダチソウ群落が優占している。上下流域の流路はしっかりとして、安定していた。

玉川流域第1号スリットダム

風蓮川支流楓沢流域第2号砂防ダム

風蓮川の支流である楓沢流域の第2号砂防ダムのスリットも2011年玉川と同じ時期に開けられた。ダムの上流はオオカサスゲ、クサヨシ、オオアワダチソウなどが見られ、ダムのスリット前の森林の枯死木が大分腐食して小さくなっている。下流域ではオオアワダチソウ、クサヨシ、オオカサスゲなどが生い茂っており、ダムの近くまで植生で覆われていた。小規模の洗堀がみられていたが、ほぼ消滅していた。砂防ダムの上下流域とも現状ではイトウの遡上に問題ないものと思われる。


▼まとめ

トライベツスリットダムの上流は良好な状態を保っている。下流は、2014年に横工が撤去され、河川の真ん中に本流が形成されていたが、2017年の春の視察において右岸に本流が形成されていたと報告した。今回、あきらかに変化してきており、右岸に本流が形成され、かつての遊水地域は草地化が進み始めた。本流形成は右岸側で推移するだろう。

玉川流域第1号スリットダムは、下流にできた湾曲方の堆積土砂は現状を広がり遊水域は縮小していた。右岸側に水草が繁茂し、水の流れは完全に無くなっている。左岸に形成されていた本流の流れは変わらずである。上流は安定。

楓沢流域第2号スリットダムは、上下流共に安定している。

3河川ともに、イトウの生息環境として良くなってきている。


道東のイトウを守る会

植生報告:神田 房行
作図:元内 孝義
写真:飯田 弘己
文責:田中 正