イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

第32回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム
第23回風蓮川水系玉川流域第1号ダム
楓沢流域第2号ダム視察報告

▼トライベツ川スリットダム

ダム堤から上流域を見る

ダム堤から見た草地化

2013年8月

2014年8月

2015年8月

2016年8月

2017年8月

2018年8月

2019年8月

2020年8月

2021年8月


▼玉川流域第1号スリットダム

ダム堤から見る下流域

ダム堤からの上流域

ダム堤から上流を見る

採捕したカニ・カラス貝

採捕した魚


▼楓沢流域第2号スリットダム

下流からスリットダムを見る

ダム堤から下流を見る

ダム堤から上流を見る

採捕した魚たち


トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダムおよび楓沢流域第2号砂防ダムの上・下流域の植生 ―2021年夏の調査―

道東のイトウを守る会 代表 神田 房行

トライベツ川砂防ダム

トライベツ川砂防ダムに2007年に開けられたスリットの効果をモニタリングするために2021年度も8月16日(月)に現地調査を行った。植生調査では2008年8月から通算14回目のモニタリング調査となる。

植生ではダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成されている。左岸のヤチハンノキとケヤマハンノキの森林化も進んでいる。ヨシがかなり増えてきて良好な湿地になりつつある。その他ハンゴンソウなどが増え欝蒼とした草地となってきた。

ダムの下流では2008年頃から土砂の堆積したところに植物群落が形成され、安定した植生となっている。右岸側にはミズハコベが大繁殖して、陸化が進行していた(写真)。植生としては外来種のオオアワダチソウが目立つが、ヨシやハンゴンソウなどの在来種も優占しており、安定した植生となっていた。

流路では、昨年から下流域の中央部を直線的に河川水が流れるようになってきていたが、この流路が主流と小流に分かれ、広がっていた。恐らく春のイトウの遡上期には増水するので遡上環境としては問題ないと思われる。今後の流路の変化を見ていく必要があろう。全体としてダムの上下流ともイトウの遡上環境が良好になってきたと考えられる。

風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム

風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2021年8月16日にスリット化後の11シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行った。

下流域では外来種のオオアワダチソウなどが優占していた。ダム下流の池状の水たまりは今年度は広く深くなっていた。数日前に大雨があり、大きくなったものと思われる。流路は一本となっておりイトウが遡上しやすい環境となっている。上流域でもオオアワダチソウが大繁殖していた。上下流域の流路はしっかりとして、安定していた。

風蓮川支流楓沢流域第2号砂防ダム

風蓮川の支流である楓沢流域の第2号砂防ダムのスリットも2011年玉川と同じ時期に開けられた。ダムの上流はオオアワダチソウやケヤマハンノキなどが繁茂していた。下流域ではオオアワダチソウオオカサスゲなどが生い茂っていた。下流域には砂だまりができて、流路が蛇行していた(写真)。砂防ダムの上下流域ともイトウの遡上に問題ないものと思われる。


▼まとめ

トライベツスリットダムの上流は良好。下流は、2014年に横工が撤去され、河川の真ん中に本流が形成されていたが、2017年の春の視察において右岸に本流が形成されているのを確認。その後も変化を続けている。流路が主本流と小流に分かれて広がっていた。かつての遊水地域は草地化がどんどん進んでいる。流路の広がりと草地化。今後、どのような変化を見せてくれるのだろうか。

玉川流域第1号スリットダムは、下流にできた湾曲方の堆積土砂の広がりは概ね昨年と変わらないと思われる。但し今回は遊水区域の水位が上がっていたがこれは雨の影響であろう。左岸に形成されていた本流の流れは安定している。

楓沢流域第2号スリットダムは、上下流共に安定している。

3河川ともに、イトウの生息環境として良くなってきている。