イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

第34回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム
第25回風蓮川水系玉川流域第1号ダム
楓沢流域第2号ダム視察報告

▼トライベツ川スリットダム

ダム堤から上流域を見る

下流の流れ

2014年8月

2015年8月

2016年8月

2017年8月

2018年8月

2019年8月

2020年8月

2021年8月

2022年8月


▼玉川流域第1号スリットダム

ダム堤からの下流域

ダム堤からの上流域

下流域

採捕したウチダザリガニ


▼楓沢流域第2号スリットダム

下流からスリットダムを見る

ダム堤から下流を見る

ダム堤から上流を見る

採捕したウチダザリガニ

採捕した魚たち


トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム
および楓沢流域第2号砂防ダムの上・下流域の植生
―2022年夏の調査―

道東のイトウを守る会 代表 神田 房行

トライベツ川砂防ダム

トライベツ川砂防ダムに2007年に開けられたスリットの効果をモニタリングするために2022年度も8月18日(木)に現地調査を行った。植生調査では2008年8月から通算15回目のモニタリング調査となる。

植生ではダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成されている。昨年と状況は殆ど同じでハンゴンソウ(在来種)が目立つ。ダム下流でも流路が安定してきている。特にダムのスリットから下流にかけてほぼ直線的に大きな流路が形成されて川底は細かい砂礫で覆われていた。特に目立った植物としてはオオアワダチソウ(外来種)、ヨシ、オオカサスゲ、ハンゴンソウ(いずれも在来種)などがみられた。昨年多かった右岸側のミズハコベ群落はかなり縮小し、ヒメウキガヤが目立つ。イトウの遡上環境としては全体的に良好になってきていると言えよう。

写真:下流部の川底は細かい砂礫にびっしりと覆われていた

風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム

風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2022年8月18日にスリット化後の12シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行った。

下流域では外来種のオオアワダチソウが相変わらず優占していた。ダム下流の池状の水たまりも相変わらず広く深くなっていた。今回の調査の前に大雨があり、水深が深くなっていた。流路は一本となっておりイトウが遡上しやすい環境となっていた。下流部の水路で珍しいヒメカイウの群落が見られたのは初めてであった。上流域でもオオアワダチソウ(外来種)が大繁殖しており、昨年と変わらない。

風蓮川支流楓沢流域第2号砂防ダム

風蓮川の支流である楓沢流域の第2号砂防ダムのスリットも2011年玉川と同じ時期に開けられた。ダムの上流はオオアワダチソウやオオカサスゲなどが繁茂していた。下流域ではオオアワダチソウ(外来種)、オオカサスゲ、クサヨシ、ミヤコザサ(写真)、ススキ、ケヤマハンノキ(いずれも在来種)などが生い茂っており、これまでよりやや乾いた環境になっているように思われる。砂防ダムの上下流域ともイトウの遡上に問題ないものと思われる。

写真:砂防ダム下流域のミヤコザサ群落


▼まとめ

トライベツスリットダムの上流は良好。下流は、2014年に横工が撤去され、河川の真ん中に本流が形成されていたが、2017年の春の視察において右岸に本流が形成されているのを確認。その後も変化を続けている。スリットから下流にかけて主本流が形成されつつある。かつての遊水地域は草地化がどんどん進んでいる。

玉川流域第1号スリットダム、楓沢流域第2号スリットダムは、上下流共に安定している。

3河川ともに、イトウの生息環境として問題ないと思われる。

玉川・楓沢両河川でウチダザリガニを採捕した。1年子と2週間ぐらいのウチダザリガニであった。そこから推察すると親(3年以上)がいるのも間違いない。今後の影響が気になるところである。

今回、トライベツでは、調査の終わりころにダム斜面で子熊を目視確認した為、調査を打ち切り撤収した。演習場には、常時3頭のヒグマが確認されていると聞いてはいたが、今まで、見ることは無かったが、今後は、ヒグマへの注意を怠らないようにと現地を後にして思ったところである。