イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

第35回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム
第26回風蓮川水系玉川流域第1号ダム
楓沢流域第2号ダム視察報告

▼トライベツ川スリットダム

ダムの上流域

下流の流れ

2014年8月

2015年8月

2016年8月

2017年8月

2018年8月

2019年8月

2020年8月

2021年8月

2022年8月

2023年8月

▼玉川流域第1号スリットダム

ダム堤からの下流域

ダム堤からの上流域

下流域からダム堤を見る

採捕したウチダザリガニ他

▼楓沢流域第2号スリットダム

ダム堤から下流を見る

ダム堤から上流を見る

下流からスリットダムを見る

採捕したウチダザリガニ

ヤマベ

トライベツ川砂防ダム、風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム、および楓沢流域第２号砂防ダムの上・下流域の植生―2023年夏の調査―

道東のイトウを守る会　代表　神田 房行

トライベツ川砂防ダム

トライベツ川砂防ダムに2007年に開けられたスリットの効果をモニタリングするために2023年度も8月16日（水）に現地調査を行った。植生調査では2008年8月から通算16回目のモニタリング調査となる。

植生ではダム上流では、河道の両側に安定した植物群落が形成されている。昨年と状況は殆ど同じでハンゴンソウ（在来種）が目立つ。ダム下流でも流路が安定してきている。しかし、ダムのスリットの直下では流路が大きく変化していた（写真）。今後注視する必要があろう。ほぼ直線的に大きな流路が形成されているが、流路の幅が大きくなっており、川底の水深が浅くなっているのが気になる所である。ただ、遡上する春期には増水することが考えられるので、遡上には問題ないであろう。

右岸側の浅い水域にはミズハコベの群落が広く広がっており、岸辺ではオオアワダチソウ（外来種）ハンゴンソウ（在来種）、オオカサスゲ（在来種）ヨシ（在来種）が目立つ。

写真：下流部のスリット直下では流路が大きく変化していた。

風蓮川支流玉川流域第1号砂防ダム

風蓮川の支流である玉川流域の第1号砂防ダムのスリットは2011年2-3月に開けられた。今回2023年8月16日にスリット化後の13シーズン目の砂防ダムの上・下流域の植生調査を行った。

下流域では外来種のオオアワダチソウ（外来種）優占しており、その他ヨシ（在来種）、オオカサスゲ（在来種）、ヒメウキガヤ（在来種）、ヒロハドジョウツナギ（在来種）、エゾノリュウキンカ（在来種）などが見られた。ダム下流の池状の水たまりかなり小さくなってきており、水深も浅くなっているようである。上流域ではオオアワダチソウ（外来種）が大繁殖しており、その他ヨシ（在来種）オオカサスゲ（在来種）などが見られた。

写真：砂防ダム下流域の水たまりが浅く、小さくなった。

風蓮川支流楓沢流域第２号砂防ダム

オオアワダチソウ（外来種）が多く、その他在来種のヨシ、イヌスギナ、オオカサスゲ、ヒロハドジョウツナギ、クサヨシなどが見られた。下流域ではオオアワダチソウ（外来種）、ミヤコザサ（在来種）などが生い茂っており、砂防ダムの上下流域ともイトウの遡上に問題ないものと思われる。

▼まとめ

トライベツスリットダムの上流は良好。下流は、2014年に横工が撤去され、河川の真ん中に本流が形成されていたが、2017年の春の視察において右岸に本流が形成されているのを確認。以後、変化し続けてきているが、スリットから下流にかけて本流が安定化しつつある。

かつての遊水地域は草地化がどんどん進んでおり、草地が右岸側にせまりつつある。

玉川流域第1号スリットダム、楓沢流域第2号スリットダムは、上下流共に安定している。

３河川ともに、イトウの生息環境として問題ないと思われる。

玉川・楓沢両河川で今回もウチダザリガニを採捕した。特に楓沢で採捕したウチダザリガニは、全長101.5mmと大きく、ウチダザリガニの棲息がどのような影響を及ぼすか気になるところである。

今年度から調査は８月のみの１回とした。今後も、見続けていきたいと考えている。