イトウ棲息河川上流部における森林施行等の留意事項について
北海道森林管理局長 2003年8月
1 趣旨
国有林野事業においては、これまでも河川環境の保全に配慮した森林施業等を実施してきたところであるが、特に絶滅のおそれが高いイトウの保護の観点から、次に規定する河川の区間等におけるイトウの生態に配慮した森林施業等の指針を作成し、これに基づき適切に実施するものとする。
2 対象とする河川の区間
対象とする河川の区間は、イトウの棲息が確認されている河川のうち、イトウが多く棲息している河川であって、上流部における国有林野内の河川のうち、自然産卵・孵化の状況等を総合的に勘案する中で、別紙により指定したものとする。
3 森林施業等の指針
対象とする河川の区間に沿った国有林野内における森林施業等については、次によるものとする。
(1)保護区域及び緩衝区域の設定
対象とする河川の区間に沿った国有林野内に保護区域と緩衝区域を設定するものとする。
ア 保護区域
対象とする河川の区間(大規模な堰堤等により遡上が困難とされる地点又は夏季に涸れる地点からおおむね30m距離をおいた上流部は除外する。)両岸からおおむね30mの区域とする。
イ 緩衝区域
保護区域の境界からおおむね100mの範囲の区域とする。ただし、分水嶺を超えない範囲とする。
(2)具体的な取扱い
保護区域及び緩衝区域においては、それぞれ次のように取り扱うものとする。
ただし、風水害、山火事など国民の生命や財産に危害を及ぼすおそれがあるため予防行為や復旧行為等を行う場合及び法令等に基づいて行われる行為についてはこの限りでない。
なお、このような行為を行う場合であっても、この留意事項の趣旨を踏まえ、イトウの保護に極力配慮するものとする。
ア 保護区域内河川等においては、産卵・孵化期間(おおむね4月~7月)における土木工事等は行わないものとする。また、保護区域内河川内に施設を設置する場合は、イトウの遡上に支障とならないよう配慮するものとする。
イ 保護区域内林分においては、イトウの産卵・孵化期間の伐採等は行わないこととし、また、これ以外の期間においても、原則として伐採等は行わないものとする。ただし、森林生態系の多様性の維持・増進及び学術研究の目的等に係る伐採、やむを得ず行う作業路等の作設に伴う支障木の伐採及び分収林等であって契約等により定めのある森林施業、人工造林地の間伐等の必要な森林施業についてはこの限りでないが、この場合であっても、極力イトウの生態に影響を及ぼさないよう配慮して行うものとする。
また、保護区域内において、土木工事等を計画する場合は、産卵・孵化期間以外の期間に作業を行うものとするとともに、路線設計等に十分留意するなど、河川への土砂流入による濁水発生防止の措置に努めるものとする。
ウ 緩衝区域においては、産卵期間(おおむね4月~5月)における伐採等は行わないものとする。また、この期間以外の期間に伐採等を行う場合、河川への土砂流入を抑えるため、極力、既設の作業路等を活用するほか、新たに作業路等を作設する場合にあっては、路線設計等に十分留意するなど、河川への土砂流入による濁水発生防止の措置に努めるものとする。
エ 前各号の行為により、河川内に遡上の支障となるような枝条等の堆積が生じた場合は、河川への影響を抑えつつ産卵のための遡上を確保する範囲で枝条等の除去に努めるものとする。
(3)工事請負人等への指導
工事の発注等に当たっては、工事請負人等に対し、この留意事項の内容を周知させるとともに、巡視等による適切な現場指導はもとより、必要がある場合は是正措置を講じさせるものとする。
また、工事等の契約に当たっては、この留意事項を踏まえ、当該工事に関係する必要な該当事項を契約書の特約事項等に示すものとする。
4 その他
(1)常設の現地表示は要しないものとするが、保護区域において土木工事等を計画する場合は、事前踏査時等に保護区域を適宜表示し区分するものとする。
(2)イトウの保護区域等については、基本図等を用い順次図面の作成・整備に努めるものとする。
(3)イトウ保護の観点から、対象とする河川の区間及び4-(2)において作成する図面等は、公表しないものとする。