イトウ保護連絡協議会

Japanese Huchen Conservation Network

陸上自衛隊矢臼別演習場の砂防ダム問題

第14回別寒辺牛川水系トライベツ川スリットダム
第6回風蓮川水系玉川流域第1号ダム・楓沢流域第2号ダム視察報告

視察日:2013年5月21日(火)
天 候:晴
参加者:10名(内報道1名)
目 的:矢臼別演習場内のトライベツ川、玉川・楓沢各スリットダムについて現況確認を行った。トライベツ川は、特にダムの下流域の河道の現況に注目した。


▼トライベツ川スリットダム

トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム植生図トライベツ川スリットダム周辺の植生図。クリックすると拡大します。
ダム堤から上流域を見る。 今年の下流中央の流れ。
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
ダム堤から下流を見る。下流左岸の旧魚道コンクリート基礎部分に土砂が堆積し左岸には流れていない。 2012年5月の下流中央の流れ。
トライベツ川スリットダム トライベツ川スリットダム
下流からダムを見る。 2011年5月の下流中央の流れ。土嚢を積み河道を作っている。

▼玉川流域第1号スリットダム

玉川流域1号スリットダム 玉川流域1号スリットダム 玉川流域1号スリットダム周辺の植生図玉川流域1号スリットダム周辺の植生図。クリックすると拡大します。
下流からスリットダムを見る。増水のため土砂が堆積し本流の流れを左右に分けている。
ダム堤から下流を見る。
玉川流域1号スリットダム 玉川流域1号スリットダム
ダム下流左岸側から下流域を見る。堆積土砂が流れを左右に分けているのがわかる。 上流域。
玉川流域1号スリットダム さらに上流。

▼楓沢流域第2号スリットダム

楓沢流域第2号スリットダム 楓沢流域第2号スリットダム 楓沢流域2号スリットダム周辺の植生図楓沢流域2号スリットダム周辺の植生図。クリックすると拡大します。
下流からスリットダムを見る。
ダム堤から下流を見る。
楓沢流域第2号スリットダム 楓沢流域第2号スリットダム
スリットから上流を見る。 更に上流。

▼まとめ

 トライベツスリットダムの上流は河道も安定し、植生も密生しており良好な状態になっている。しかし、下流については、安定していない。ダム直下旧魚道コンクリート基礎部分に土砂が堆積し、左岸の流れは完全に止まっている。本流は、スリットより中央部に流れ、横工に沿って左折して左岸の横堤より下流の流れ出しに向かっているが、流れの一部は横工の間を通り下流に流れている。

 2011年の5月の視察時には、中央部に土嚢が積まれ流れを誘導しようとしていたが、その土嚢も水没し完全に姿は見えない。スリットの出口より一部の流水は、ダム本体に沿って右岸の壁に向かい僅かながら下流に流れており、中央部は完全な止水状態になっており水温も流水域より高い。

 そこで、下流の本流形成が急務と思われる。まず、ダム直下から右岸への流れを止め、流れを中央に導き左岸側に流すべく、中央部に土嚢やサンドバックを高く積み右岸側の止水域と分離すべきである。本流を一本に導き一定の水深と水量を保つことが必要と思われる。

 玉川流域第1号スリットダムについてだが、下流部の流れが大きく変わり大きな課題が持ち上がった。4月の降雨と融雪水による鉄砲水で、上流・下流ともに状況の変化があった。上流部では土嚢が水没。下流部は、土砂が湾曲がたに堆積し、川の流れは左右に分けられていた。玉川ではよく確認できなかったが、楓沢では川の中で同じ状態が見られたので、同様のことが玉川でも起きたと思われる。つまり、急激な増水によりスリットから放出された水がコンクリート水路の切れたところを洗掘し、土砂を堆積させたものと思われる。別海駐屯地の担当者の話によれば、コンクリート水路の先の深さは2m以上あり危険なのでロープをめぐらしたとのことである。早急な原因究明と対策が必要と思われる。

 楓沢流域第2号スリットダムだが、玉川同様増水による影響を受けていた。土嚢の水没。サンドバックが潰れ中の砂も流出していた。ダム下流の川岸の上にも水が流れた跡があった。玉川と違う点は、玉川は下流域が広がっておりその為土砂堆積が起きていたが、楓沢の下流域は両サイドしっかり形成されており土砂堆積はおきてなかった。下流域の自然蛇行の淀みでは稚魚の姿も確認できた。

 玉川・楓沢は今までは安定した状態が保たれていたが、今回のような増水がおきたときに、今後、どのように対応するのか大きな課題と言える。玉川に関して言えば、早急な本流形成が必要である。現在の、左右に別れた状態での流れでは、渇水期には川の流れがなくなると思われる。

 トライベツの下流域の本流形成がうまくできない。玉川の土砂堆積。共に、下流域が大きく広がっていることが原因ではないだろうか。スリットを入れイトウが遡上できればと期待しているのだが、本流が形成されないことや土砂の堆積がおきるのであれば、イトウを含めた魚類の生息が脅かされるのではないかと思われる。8月に行う視察において問題が解消されてなければ行動を起こさなければと考えている。

道東のイトウを守る会
作図:元内 孝義
写真:飯田 弘己
文責:田中 正