イトウは今まさに激減し絶滅の危険にさらされています。

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特集/矢臼別演習場内の砂防ダム問題の目次


平成19年3月26日

道東のイトウを守る会 殿

札幌防衛施設局事業部長

矢臼別演習場内風蓮川水系の砂防ダム事業に関する質問書に対する回答

 標記に係る質問書について以下のとおり回答いたします。

 当局としては、平成18年12月21日付けで回答したとおり、平成18年9月21日に自然保護団体の案内でイトウの生息を過去に確認したとされる場所の確認を行った4河川について、今年のイトウが遡上する時期等に、有識者等の意見を踏まえてイトウの生息調査を行いたいと考えており、三郎川流域第6号ダムその他の地域についても有識者等の意見を踏まえて調査対象に加えることを考えております。

 また、調査した結果の公表については、御要望に十分配意し、対応していきたいと考えています。

 いずれにしても、風蓮川水系における魚介類の保護については、当局としては矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会での検討結果及びイトウの生息調査の結果等を踏まえつつ適切に対応してまいりたいと考えております。

以上


2007年3月5日

防衛施設庁札幌防衛施設局長殿

矢臼別演習場内風蓮川水系の砂防ダム事業に関する質問書

道東のイトウを守る会(代表 小林聡)
要望書窓口  同会事務局 

 私たち「道東のイトウを守る会」が所属する『イトウ保護連絡協議会』は、北海道内の各地域でイトウの保護活動をおこなっている10団体の連合体です。貴職による別寒辺牛川などの砂防ダム事業にこれまで5度(2003年5月2004年3月2005年5月同10月2006年9月)にわたり、要望書及び質問書をお届けして参りました。
 この間、別寒辺牛川における砂防ダムの効用(下流域での濁水防止効果)と、自然環境に与える悪影響を再検討の上、貴職はダムがほとんど無効なことを認められ、本種の繁殖を妨げないよう、未着工だったダム計画を撤回し、すでに完成したダム1基の堤体に隙間(スリット)を新設されました。貴職のイトウ保護に対するご理解と真摯なご対応に改めて敬意を表したいと思います。
 2006年5月から7月にかけて同演習場内の風蓮川水系においても専門家によりイトウの繁殖が改めて確認されました。同年5月には「国際自然保護連合(IUCN)」により、イトウはレッドデータの中でも最も絶滅の危機の高い種(CR)のひとつに指定されています。風蓮川水系では1980年代後半からこれまでに既に15基の砂防ダムが設置され、本種風蓮川個体群に極めて重大な悪影響をもたらしており、別寒辺牛川の事例よりも事態は深刻です。同一演習場内の本種生息地を脅かす砂防ダムに対して、一方だけ放置し続けることは著しく整合性を欠きます。いくつかの支流では既に支流レベルの本種個体群の絶滅が進行しており、早急に対応しなければ、風蓮川水系のイトウは絶滅してしまうでしょう。風蓮川水系のイトウ保護のために一刻も早く本種の生息・繁殖環境の復元などの対応をしていただくよう、以下の項目について質問いたします。
 失礼ながら、今年3月26日までに文書で上記窓口宛に本質問に対するご回答をお届け下さい。なお、情報共有の観点から本文書と貴職からの回答書は当協議会ウェブサイトに公開いたしたいと考えます。風蓮川水系の絶滅危惧種イトウの生息環境保全のために、どうぞ、一層ご配慮いただくようにお願い申し上げます。

(一)矢臼別演習場内、風蓮川水系及び三郎川全河川におけるイトウの生息調査を実施してください。
 2006年5月から7月にかけて、専門家により同演習場内の支流は風蓮川水系におけるイトウの重要な繁殖場所であることが改めて明らかになりました。少なくとも演習場内の3支流で本種の産卵・孵化が確認され、そのうち2 支流のダムには魚道がなく、明らかに親魚の繁殖場所への遡上を阻害しています。
 協議会の要望書に対する札幌防衛施設局事業部長の昨年12月21日付け回答によれば、演習場内の風蓮川支流において、「イトウの生息を過去に確認したとされる場所の確認を行った4河川について、平成19年度のイトウが遡上する時期等に、有識者等の意見を踏まえて調査を行いたいと考えており、また、三郎川流域第6号ダムその他の地域についても、必要があれば、調査対象に加えることを考えております」とのことでした。これまでイトウが確認された支流のみならず、本種が繁殖する可能性がある風蓮川水系及び三郎川全河川において改めて専門家による綿密な生息状況調査を実施してください。また、ダムが親魚の繁殖期の移動(遡上及び降下)に及ぼす影響調査、そして魚道が設置されているダムに関してはその有効性に関する調査を実施してください。

(二)上記イトウの生息調査における調査結果の情報公開を実施してください。
 絶滅危惧種イトウの繁殖箇所が特定できるような情報については、細心の注意が必要ですが、今後のダム及び魚道の有効性議論やイトウ保護に重要となる調査結果におきましては、何らかの情報公開の措置を検討くださるようお願いします。

(三)イトウの生息を阻害する場合における、ダム撤去を含む早急の対応策を実施してください。
 上記調査、またこれまでに明らかにされてきた報告から、ダムの存在がイトウの生息を阻害していると考えられる場合には、ダム自体の撤去を含む対応策を早急に実施してください。

(四)三郎川第6号ダム計画の撤回と、作業用道路の自然状態への復元を実施してください。
 昨年12月に三郎川第6号ダムに関しては、環境調査のため2007年度建設費計上を見送られたと報道されております。当会としても11月に建設予定現地視察を実施し、演習場内で砂防ダムが建設された地は本来このような湿原の姿を留めていたはずであると確認いたしました。また、今後この地に砂防ダムを建設する必要性に関しては否定的にならざるを得ません。三郎川第6号ダム計画を撤回し、既存の作業用道路に関しては着工前の自然の姿へと自然再生事業を実施してください。

(五)演習場内における、今後の新規砂防ダム計画の中止を検討してください。
 『矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会』では、「演習にともなう土砂流出は起きているが、流出土砂の大半がダムでは捕捉できない」とされ、砂防ダムの存在意義そのものが否定されました。ダムによる砂防対策を見直し、今後のダム建設計画を即時中止してください。

以上


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