イトウは今まさに激減し絶滅の危険にさらされています。

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特集/矢臼別演習場内の砂防ダム問題の目次


2006年9月6日

防衛施設庁長官殿
防衛施設庁札幌防衛施設局長殿

矢臼別演習場内風蓮川水系の砂防ダム事業に関する要望

イトウ保護連絡協議会
構成団体
道東のイトウを守る会(会長 小林聡史)
釧路自然保護協会(会長 高山末吉)
猿払イトウの会(会長 小山内浩一)
尻別川の未来を考える オビラメの会(会長 草島清作)
斜里川を考える会(会長 滝沢素子)
朱鞠内湖淡水漁業協同組合(代表理事組合長 菅原博)
ソラプチイトウの会(会長 伊藤行浩)
十勝のイトウを守る会(代表 太田博樹)
別寒辺牛川流域イトウ保護連絡協議会(会長 石沢元勝)
遊楽部川の自然を守る会(代表 稗田一俊)
イトウ保護連絡協議会のサイト http://itou-net.hp.infoseek.co.jp/
要望書窓口  イトウ保護連絡協議会・道東のイトウを守る会 田中明子
(住所、電話番号省略)

 

 私たち「イトウ保護連絡協議会」は北海道内の各地域でイトウの保護活動をおこなっている10団体の連合体です。貴職による別寒辺牛川などの砂防ダム事業にこれまで4度(2003年5月2004年3月2005年5月同10月)にわたり、要望書・質問書をお届けして参りました。
 この間、別寒辺牛川における砂防ダムの効用(下流域での濁水防止効果)と、自然環境に与える悪影響を再検討の上、貴職はダムがほとんど無効なことを認められ、本種の繁殖を妨げないよう、未着工だったダム計画を撤回し、すでに完成したダム1基の堤体に隙間(スリット)を新設するという異例の決定をされました。貴職のイトウ保護に対するご理解と真摯なご対応に改めて敬意を表したいと思います。いっぽう、同じ矢臼別演習場内の風蓮川や、猿払村の鬼志別演習場内のイトウ生息地における砂防ダム建設については、当協議会の要望にお答えいただけず、たいへん残念です。
 本年5月から7月にかけて同演習場内の風蓮川水系においても専門家によりイトウの繁殖が改めて確認されました(詳しくは、当協議会ウェブサイトをご参照下さい)。同水系では1980年代後半からダム建設が始まり、現在既に15基の砂防ダムが設置され、本種風蓮川個体群に極めて重大な悪影響をもたらしており、別寒辺牛川の事例よりも事態は深刻です。同一演習場内の本種生息地を脅かす砂防ダムに対して、いっぽうだけ放置し続けることは著しく整合性を欠きます。いくつかの支流では既に支流レベルの本種個体群の絶滅が進行しており、早急に対応しなければ、風蓮川水系のイトウは絶滅してしまうでしょう。風蓮川水系のイトウ保護のために一刻も早く本種の生息・繁殖環境の復元などの対応をしていただくよう、以下の項目について要望します。
 失礼ながら、今年9月15日までに文書で上記窓口宛に本要望に対するご回答をお届け下さい。なお、本文書と貴職からの回答書は当協議会ウェブサイトに公開します。風蓮川水系の絶滅危惧種イトウの生息環境保全のために、どうぞ、いっそうご配慮いただくようにお願い申し上げます。

(一)矢臼別演習場内の風蓮川水系の砂防ダムを適切な方法で撤去・改修して、早急にイトウの繁殖環境を復元してください。
 本年5月から7月にかけて、専門家により同演習場内の支流は風蓮川水系におけるイトウの重要な繁殖場所であることが改めて明らかになりました。少なくとも演習場内の3支流で本種の産卵・孵化が確認され、2003年には他の支流に繁殖のために遡上した親魚が地元住民により写真撮影されています。そのうち2支流のダムには魚道がなく、明らかに親魚の繁殖場所への遡上を阻害しています(詳しくは当協議会ウェブサイトをご参照下さい)。二次的な環境破壊を起こさない適切な方法で、早急にイトウの繁殖・生息環境を復元してください。

(二)風蓮川水系における三郎川流域第6号砂防ダムや、今後の新規ダム建設計画を即時中止してください。
 貴職は、ダム建設の目的を「演習場から河川下流域への土砂流出を防止するため」としていますが、矢臼別演習場・別寒辺牛川水系土砂流出対策等検討委員会では、「演習にともなう土砂流出は起きているが、流出土砂の大半がダムでは捕捉できない」とされ、ダムの存在意義そのものが否定されました。ダムによる砂防対策を見直し、今後のダム建設計画を即時中止してください。

(三)風蓮川水系における綿密なイトウ生息調査を実施してください。
 貴職がこれまで、当協議会への回答書などで引用されてきた風蓮川水系におけるイトウの生息調査結果は信憑性に乏しく、本種が繁殖する可能性がある同演習場内の風蓮川支流全てにおいて改めて専門家による綿密な生息調査をしてください。また、魚道つきのダムにも構造上の欠陥があり、親魚の繁殖場所への移動を明らかに阻害しています。ダムが親魚の繁殖期の移動(遡上及び降下)に及ぼす影響の調査を早急におこなってください。

(四)風蓮川水系砂防ダムの調査とその結果公表を急いでください。
 当協議会の要望に対して貴職は2004年5月17日付けで「風蓮川水系における土砂流出の実態把握のため、平成16年度に堆砂量調査をおこなうことにしており、この調査結果については、検討委員会に報告したい」とご回答でした。しかし、未だに結果は公表されていません。一般の人に分かりやすい説明を添付した調査結果を早急に公表し、同演習場内の全ての砂防ダムについて、必要性について明確な根拠を示してください。

(五)鬼志別演習場内の知来別川におけるイトウの綿密な棲息調査を実施してください。
 当協議会に対するこれまでの貴職の回答で、「環境調査の結果、イトウは生息していない」としてきた河川のうち、少なくとも3河川で現在もイトウが繁殖し、別の1河川でも本種が繁殖している可能性が高いことが明らかになりました。これまで貴職が引用してきた環境調査結果の信用性が問われており、鬼志別演習場内の知来別川についても、貴職の回答をそのまま信用することは到底できません。知来別川においても改めて専門家によるイトウの生息調査及び自然環境全般の綿密な調査を実施してください。

以上


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